- 2026年10月8日
- 2026年10月20日
休むこと、働くこと、そして循環すること
「よく休まないですね」と言われることがあります。
けれども、私たち自身は、あまり「休んでいない」という感覚を持っていません。
なぜなら、私たちにとって大切なのは、働くことと休むことをきれいに分けることではなく、**その間を自然に循環していること**だからです。
心臓を考えてみると分かりやすいと思います。
心臓は収縮して血液を送り出し、拡張して次の収縮に備えます。
収縮している時間だけが「仕事」なのではありません。
拡張している時間も、次の仕事のために必要な時間です。
つまり、心臓は動き続けながら、同時に休んでいる。
**働くことと休むことが、最初から一つのリズムの中に組み込まれているのです。**
これは、私たちの身体だけの話ではありません。
太陽が昇り、沈む。
月が満ち、欠ける。
潮が満ち、引く。
呼吸を吸い、吐く。
生命は、同じ状態をずっと維持することで成り立っているのではなく、変化しながら循環することで成り立っています。
だから、「休日」という一日を設けて完全に止まることだけが休息なのではないと思います。
仕事の合間に身体を緩める。
人と離れて静かな時間を過ごす。
身体を動かす。
眠る。
そして、また自然に動き出す。
そうした小さな「拡張期」が日々の中にあることで、次の「収縮期」を迎えることができます。
医療についても、同じことが言えるのではないでしょうか。
患者さんの身体は、曜日によって生命活動を止めてくれるわけではありません。
夜になったから心臓が休むわけでもありません。
だからこそ、医療にも循環が必要です。
一人の医療者が24時間働き続けるのではなく、それぞれが役割を担い、必要なときには必要な人へつながっていく。
私たちの周りには、同じような考え方で医療に向き合っている医師たちがいます。
それぞれが自分の仕事を持ち、自分自身の時間や生活も大切にしながら、必要なときには自然に手を差し伸べてくれる。
細かな説明をしなくても、医療に対する考え方や大切にしているものが通じる。
そうした医師とのつながりがあることで、一人ではできないことが、無理なく一つの医療としてつながっていきます。
誰か一人が頑張り続けるのではなく、**それぞれの人が、それぞれのリズムで力を発揮しながら、全体として医療が循環していく。**
私たちは、そういう医療のあり方を大切にしています。
誰かが休んでいる間も、別の誰かが支える。
そして、支えた人もまた休み、次の仕事に戻っていく。
**人が24時間働き続けるのではなく、医療そのものが途切れずに循環している。**
それが、持続可能な医療なのだと思います。
そして、こうした循環を支えるものの一つが、プロフェッショナルとしての意識なのではないでしょうか。
プロフェッショナルとは、単に知識や技術を持っていることだけではありません。
必要なときに動けること。
人と人をつなぐことができること。
自分が担当していない時間にも、必要なものが途切れないようにすること。
そして、それを特別なこととしてではなく、当たり前のこととして続けること。
太陽は、毎朝「今日も頑張ります」と宣言して昇るわけではありません。
厚い雲に隠れて、その姿が見えない日もあります。
それでも、太陽が昇るというリズムそのものが失われるわけではない。
見えているかどうかにかかわらず、循環は続いています。
仕事も、医療も、そして人の生活も、本当はそういうものなのかもしれません。
誰かに評価してもらうためではなく、
誰かに褒めてもらうためでもなく、
**当たり前のことを、当たり前に続けていく。**
その積み重ねの中に、プロフェッショナルとしての静かな誇りがあるのだと思います。
休むことと働くことは、対立するものではありません。
止まることと動くことも、対立するものではありません。
収縮と拡張。
吸うことと吐くこと。
満ちることと引くこと。
そして、働くことと休むこと。
その両方があって、一つの生命のリズムになります。
**大切なのは、止まらないことではなく、循環していること。**
その循環が途切れないこと。
そして、また自然に次の一歩を踏み出せること。
それが、人が健やかに生き、医療が長く続いていくための、一つの大切な姿なのではないかと思います。
