- 2026年10月30日
説明することとその内容の大切さ
先日、進行がんの患者さんを訪問しました。
食事を摂ることが難しく、点滴による栄養管理を受けている患者さんです。
以前から、お腹の診察をすると腹水が溜まっていることがわかっていました。ご本人もお腹の苦しさを訴えておられたため、訪問時に超音波検査を行い、腹水の状態を確認しました。
循環動態に留意しながら腹水を穿刺して排液すると、5.5リットルもの水が抜けました。
処置のあと、ご本人は「楽になった」と話してくださいました。
そして今日、再び訪問しました。
お腹の苦しさが戻ってきていました。診察すると、再び腹水が溜まってきており、胸水も認められました。
これからの経過を考え、どのような対応が可能なのか。身体への負担も考慮しながら、必要な処置や今後の選択肢についてお話ししました。
そのとき、患者さんがこんなことを話してくださいました。
「先生や看護師さんと話していると、いろいろなことがよくわかって安心します。昼間は家族もいなくて不安だったけれど、ちゃんと説明してもらえて、とても安心しました」
この言葉が、心に残りました。
私たちは、診察するときに、できるだけ自分の目で確かめることを大切にしています。
超音波検査であれば、画面に映し出される身体の状態を、可能な範囲で患者さんやご家族にも一緒に見ていただきます。
そして、いま何が起きているのか、なぜ苦しいのか、これから何が考えられるのかを、その場で説明します。
医療の専門知識がなくても、目の前の画面を一緒に見ながら話を聞くと、身体の中で起きていることを、ある程度具体的に理解できます。
わからないことが、少しずつわかるようになる。
先の見えない不安の中に、少しずつ見通しが生まれる。
それだけでも、人は安心できるのだと思います。
もちろん、説明だけですべての苦痛を取り除けるわけではありません。必要な処置を行い、状態に応じて専門的な医療につなぐことも大切です。
自宅で過ごすことが難しくなれば、ドクターホームという選択肢もあります。
大切なのは、最初から行き先をひとつに決めてしまうのではなく、そのときの身体の状態やご本人の希望に合わせて、一つひとつ選択肢を考えていくことだと思っています。
私は、患者さんの身体を診るだけでなく、患者さん自身が自分の身体に何が起きているのかを理解し、これからを考えられるようにお手伝いしたい。
そして、不安なときに、きちんと話を聞き、納得できるまで説明できる臨床医でありたいと思っています。
医療とは、苦痛を取り除くこと。
それと同時に、患者さんが自分らしく過ごすための可能性を、一緒に探していくことでもあるのだと思います。
